東洋医学と頻尿の関係

東洋医学、漢方医学では、頻尿はどのように考えられているのでしょうか?それを考えるには、まず、頻尿がなぜ起こるのかを理解する必要があります。

ところで、最近、「頻尿」という言葉が注目を集めているのはなぜでしょうか?それは、2002年に国際尿禁制学会(世界的に排尿のことを研究する学会)が、頻尿と尿意切迫感に悩む患者を、原因に関係なく「過活動膀胱」と呼ぶことに決定したからです。

このような決定がなされたのは、同様の悩みを持つ患者がアメリカに約3400万人もいることが判明したからです。

アメリカの人口が約2億8000万人で、関節炎の患者が約3500万人、高血圧約2800万人、アレルギー性鼻炎約2500万人、ぜんそく約1400万人、糖尿病約700万人であることを考えると、過活動膀胱の患者がいかに多いかが分かるでしょう。

ちなみに、その後日本でも同様の調査が行なわれた結果、40歳以上の過活動膀胱の患者が約810万人、成人の約15人に1人いることが判明しました。

西洋医学では、検査で明らかな異常が見付からなければ正常と判断され、自覚症状だけでは「気のせい」と言われて診察が終わることもあります。頻尿や過活動膀胱の症状が正にそれでした。

一方、1980年頃から医学界で「クオリティ・オブ・ライフQuality of Life」という概念が注目され、幸福感や充足感を持って生きることが重視されるようになりました。

そして、過活動膀胱がこの「クオリティ・オブ・ライフ」を特に低下させることも分かりました。

東洋医学、特に漢方医学には古典の時代からこの概念に通じる原理が内包されています。そこで、漢方医学を学んで導入する泌尿器科や婦人科の医師も目立って現れるようになりました。

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骨盤底障害や前立腺肥大症に起因する頻尿は“腎虚”

このように、頻尿・過活動膀胱と東洋医学、漢方医学には、近年、際立った関係があります。上記のように、頻尿を含む過活動膀胱の原因は、大抵、西洋医学では異常と見なされないくらいの目立たないものです。

その多くは、骨盤底筋群の緩みに起因するもの(「骨盤底障害」と呼ばれています。)です。

骨盤底筋群が緩む原因は、細かく見れば様々ですが、大きく見れば加齢、あるいは、多くの人に共通する特定の人生経験(妊娠、出産など)にあります。

このように、加齢や人生経験によって身体の機能が低下することを、漢方医学では「腎虚」と呼んでいます。前立腺肥大症によって起きる頻尿も同様です。膀胱炎など細菌性の病気に起因する頻尿と神経因性膀胱による頻尿以外は、ほとんどこれに該当します。

「腎虚」という名称の「腎」は、腎臓のことではなく、生命エネルギーである「気」を蓄える心身の働きである「腎」を指しています。そして、「腎虚」という名称の「虚」は、その働きの衰え、不足を意味しています。

つまり、「腎虚」とは、生命エネルギーを蓄えられなくなっている状態、を意味しており、加齢や人生経験によって骨盤底筋群や前立腺などの身体部位が衰えて頻尿が生じている状態、というのは正に「腎虚」と言えます。

代表的な補腎剤、八味地黄丸

したがって、漢方医学で頻尿を治療することは、ほとんどの場合、腎虚を改善することだ、と言えます。では、実際にはどのようにするのでしょうか?

漢方医学には、鍼灸、マッサージ、気功、養生(食養など)が含まれますが、代表的な治療法は漢方薬(漢方方剤)です。そこで、ここでは特に、腎虚を改善するために用いられ、「補腎剤」と呼ばれる漢方薬の幾つかについて説明します。

代表的な補腎剤として知られているのは、八味地黄丸(はちみじおうがん)です。八味地黄丸は、疲れやすく、手足が冷えやすく、尿量減少または多尿で、時に口が渇く人(特に痩せ気味の中高年)の、頻尿、排尿困難、残尿感などの泌尿器系の症状、下半身や手足の冷えや痛みやしびれ、かすみ目、全身のむくみやかゆみ、倦怠感、前立腺肥大症、坐骨神経痛、腎炎、糖尿病、高血圧に効果があります。

なお、妊婦または妊娠している可能性のある人は、流早産の危険性があるため、服用しないことが望ましいです。また、胃腸が非常に弱い人や下痢しやすい人や、逆に体力が充実している人、暑がりでのぼせが強く赤ら顔の人は、副作用が起こりやすくなるため、慎重に服用し、出来れば服用しない方が良いです。

処方薬のメーカーとしては、顆粒剤を発売しているツムラがよく知られています。その他にも幾つかのメーカーが錠剤を発売しています。

その他の補腎剤

その他の補腎剤にはどのようなものがあるでしょうか?

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、西洋医学的な臨床試験でも効果が確認された漢方薬です。実は、この薬は、八味地黄丸に牛膝(ごしつ)、車前子(しゃぜんし)という利尿効果の高い生薬を加えたものです。

ですから、効果や注意点は八味地黄丸とよく似ています。とは言え、高齢者の頻尿、特に夜間頻尿、老人性皮膚掻痒症、糖尿病性神経障害などには極めて効果があります。なお、処方薬のメーカーは、ツムラ1社のみです。

六味丸(ろくみがん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)は、牛車腎気丸とは逆に、八味地黄丸から桂皮(けいひ)と附子(ぶし)を除いて、子供の夜尿症や高齢者のむくみにも用いることが出来るようにしたものです。

ですから、これも、効果や注意点は八味地黄丸とよく似ています。処方薬のメーカーは、六味丸がクラシエ製薬とツムラ、六味地黄丸が康和薬通=大杉製薬と東洋薬行です。

五淋散(ごりんさん)は、体力が比較的充実しているか、やや低下した人の頻尿、排尿痛、残尿感に効果がある漢方薬です。この薬は、アルドステロン症、ミオパチー(ミオパシー、筋肉障害)、低カリウム血症の人は服用してはなりません。

禁忌とされています。本剤に甘草が配合されているため、症状が悪化するおそれがあるからです。なお、処方薬のメーカーは、ツムラと東洋薬行のみです。

清心蓮子飲(せいしんれんしいん)は、胃腸が弱く、比較的体力を低下させており、全身倦怠感があり、口が渇き、尿が出にくい人の、頻尿、排尿痛、残尿感に効果があります。処方薬のメーカーは、康和薬通=大杉製薬、ツムラ、東洋薬行です。

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